「黒猫のお兄ちゃんかっこよかったっすねぇー。まあ、兄様にはちょっと敵わないっすけど。ふふっ」
そうつぶやきながら、詠は自然と笑みを浮かべていた。
こんなにほっこりとした気持ちになったのは、どれぐらいぶりだろうか。
あんなの見せつけられたら、余計に会いたくなってしまう。
大好きな、兄様に。
きっと同じ状況だったら、兄様も同じことを言ってくれるだろうな。
会いたいな、兄様……。
「……聞いてんのかよ、おいっ!」
「センチメンタルな気持ちに浸ってるとき……聞くわけないじゃないっすか、弱い者いじめするバカの言葉なんて」
「なんだとこのっ……こうなったら、黒猫の代わりにお前を……」
「黒猫お兄ちゃんの言うとおり、やっぱヒトなんか最低っすね……」
わき上がるのは、暗く深い、気持ち。
痺れるような感覚が全身を駆け抜ける。
「傷つけられる痛みも、怖さも……全然想像できないおバカさんたちに、詠が直々に教育してあげるっすよっ!」
ばちんっ、となにかが弾けたのを感じた悪ガキたちは、はじめはなにをされているのかわからなかった。
やがて、身動きがとれないことに気づいて焦りはじめる。
「さあ、詠の手の中で踊るっす」
Episode.4 『詠と子猫とヒト』 〜fin〜