●Episode.4 『詠と子猫とヒト』
←前のページへ | ■挿絵を見る | 次のページへ→ page.5
「黒猫のお兄ちゃんかっこよかったっすねぇー。まあ、兄様にはちょっと敵わないっすけど。ふふっ」
 そうつぶやきながら、詠は自然と笑みを浮かべていた。
 こんなにほっこりとした気持ちになったのは、どれぐらいぶりだろうか。
 あんなの見せつけられたら、余計に会いたくなってしまう。
 大好きな、兄様に。
 きっと同じ状況だったら、兄様も同じことを言ってくれるだろうな。
 会いたいな、兄様……。
「……聞いてんのかよ、おいっ!」
「センチメンタルな気持ちに浸ってるとき……聞くわけないじゃないっすか、弱い者いじめするバカの言葉なんて」
「なんだとこのっ……こうなったら、黒猫の代わりにお前を……」
「黒猫お兄ちゃんの言うとおり、やっぱヒトなんか最低っすね……」
 わき上がるのは、暗く深い、気持ち。
 痺れるような感覚が全身を駆け抜ける。
「傷つけられる痛みも、怖さも……全然想像できないおバカさんたちに、詠が直々に教育してあげるっすよっ!」
 ばちんっ、となにかが弾けたのを感じた悪ガキたちは、はじめはなにをされているのかわからなかった。
 やがて、身動きがとれないことに気づいて焦りはじめる。
「さあ、詠の手の中で踊るっす」

 Episode.4 『詠と子猫とヒト』 〜fin〜