孤高の銀狼。それが周防院蓮華の通り名だ。
大人数相手でも引かず、たった一人で戦い続けてきた彼女の名前。
その名前自体に、彼女は興味がなかった。
長く美しく伸びた銀髪は人混みの中でもよく目立つ。
女の子なら、自慢にもなるだろうその髪を、彼女は嫌っていた。
目立ってしまうせいで、厄介ごとに巻き込まれてしまうから。
降りかかる火の粉は振り払わなければならない。
そうしてきた結果がその通り名。
いっそ、戦うことをやめてしまえば楽だろうと、そうも考えたが、兄の残した言葉が、彼女を支え、そして縛っていた。
いま、彼女は数十人の不良たちと対峙している。
こちらは自分一人。
いままでも、そしてこれからもきっと、彼女は一人だろう。
そう思っていた。
彼女は、集団の先頭に立つ少女を睨みつける。
「ケンカなら早くしよう……簡単には負けてやらないからな」
「だから、そうじゃなくてね……まあ、この状況じゃ勘違いされても仕方ないと思うんだけどさ……」
煮え切らない態度に、周防院蓮華は苛立つ。
「ケンカじゃないならなんだっていうんだ」
「そ、それは……」