●Episode.3 『ましろとゲームとおかえりなさい』
「それじゃ、あたいら出てくるから。ちゃんとお留守番してるんだよ」
「んー」
「夕飯までには帰ってくるからさ。戸棚のお菓子、食べちゃダメだからね」
「……」
「……ましろちゃん、お返事は」
「……んー」
息が抜けただけの返事を聞くと、舎妹たちはぞろぞろと出かけていった。
お留守番は慣れている。
というより、出かける用事があっても、面倒なので出かけない。
だから、必然的にいつもお留守番になる。
家の用事はみんなに任せていれば上手くやってくれるし、ましろ本人も不便はなかった。
ましろは、動きたくない。
みんなは、ましろのためにいろいろしてあげたい。
互いのしたいことが一致して、みんな幸せ、ということなのだ。
そうこうしているうちに、モニター画面では、拠点の街を出て、目的地の道中にある森へとさしかかっていた。
ましろの操作キャラクターは、装備品をがちゃがちゃと鳴らしながら、みんなの後についていく。
新モンスターの出る高原へ向かうだけなら、アイテムを使えばすぐに行ける。
それをしないのは、今回の目的が狩りではないから。
こうして移動中にも、チャットウィンドウでは世間話が続いていた。
そういう楽しみ方をするのが、このパーティなのだ。
話題はゲームのことから、リアルの愚痴まで様々。
といっても、みんなそこまでリアルを持ち込まない。
嘘ではなく冗談として、ほどよい距離感を保ちながら遊ぶ。
それがましろには丁度よかった。