●Episode.3 『ましろとゲームとおかえりなさい』
気づけば、もう三時間も高原を彷徨っていた。
仲間の一人が、別窓で得た情報に従って、高台のほうへと向かったのだが、すでに他のキャラに狩られてしまった後のようで、亡骸すら存在しなかった。
それから、出現すると言われるポイントを探し回っているのだけど、いまだに尻尾すら拝めていない。
そんな中でも会話は続いているので、捜索も退屈ではなかった。
このまま見つかるまで、とみんな思ってはいるのだけど、やはり時間は有限で、さらに一時間が過ぎたころ、仲間の一人が、申し訳なさそうに切り出した。
「ごめん、私そろそろ……」
それをきっかけに、一人また一人と、リアルの事情でそれぞれ落ちてしまい、気づけば六人いたパーティは、ましろを入れて二人になっていた。
残った一人とで捜索するも、例のモンスターは見つからない。
「今日はもうだめかなぁ」
「むりかもwおれもそろそろヤバイw」
「ハーレム男爵も、今日これからなんかあるのー?」
「おかんの見舞いwいもようかん買ってこいってw」
「そっか、それじゃ今日はここまでだねー」
「すまぬシロタソwこのうめあわせはするからw」
「気にしなくていいよー、お母さんによろしくねー」
ハーレム男爵のキャラが、ワープするかのように、白いオーラをまとって消える。
そこにいた魂が、モニターからリアルへ帰って行くみたいだと思った。
ふと窓の外を見れば、日が傾き開けていた。
部屋も薄暗くなっていて、なんとなく紺色のフィルターをかけられているみたいだ。
少し考えたあと、ましろはゲームからログアウトした。
ソロプレイをしてもよかったのだが、そういう気分にもなれなかったから。
ゲームなら、ネットにも手元にもいっぱいあるのだ。