初めは些細なノイズに近いものだった。
すれ違いざまに感じたことを、そのまま大人に伝えた。
「ねぇ、どうして笑ってるの? あなたはあの人のこと、本当は嫌いなんでしょう?」
なにを言ってるのと、最初は誰も相手にしなかった。
しかし、同じことが続けば、信じがたいことでも、もしかしたらと信憑性を増していく。
口に出していない本音を悟られ、次第に詠をとりまくすべての人が、彼女を避けるようになった。
本人もまた、自分の力に気づきはじめていた。
望んで得たものじゃないのに、その力のせいで、みんな詠のそばからいなくなっていく。
気がつけば、彼女は一人になっていた。
味方であるはずの親にも気味悪がられ、孤独を強制された。
ただ一人……兄を除いて。
だが、唯一のよりどころも、あっけなく壊れてしまい、詠は再び一人になる。
喪失と孤独に、彼女の力はさらに研ぎ澄まされた。
心を読むことで精一杯だった力は、いまでは電波で干渉した生き物を操ることができるほどに。