夢じゃないのかと思った。
三枚の便せんに書かれた文面を、何度も何度も読み返す。
もちろん内容は、最初に読んだときと一語一句変わることはない。
次に、頬をつねってみた。
痛くない。
いや、痛いけど、痛みよりも気持ちの高まりのほうが何倍も勝っていて、
それどころじゃない。
かな子が受け取ったエアメール、その書き出しはこうだ。
「そっちに帰ることが決まったんだ」
その一文を見つめるだけで、勝手に視界が滲んでいく。
涙がこぼれそうになった瞬間、手紙が濡れてしまわないように、ぐっと顔を上げた。
泣いてちゃいけない。
嬉しいことなんだから、泣いちゃダメだ。
でも……。
嬉しいことでも、涙は流れてしまう。
離ればなれになったあの日から、ずっと欲しかった知らせがここにある。
この日を、ずっと待ち続けていた。
この日を信じて、いままで暮らしてきたんだ。
こみあげてくる気持ちは言葉にできず、涙となって溢れ出るばかり。
「いつか俺がみんなを迎えに行く。だから、それまで強く生きるんだよ」
思い出されるのは、兄が別れ際に伝えた言葉。
「そうだ、しっかりしないと……」
泣いてばかりだったあの頃とは違う、それを兄さんに知ってもらうんだ。
パチンと、両頬を叩いて、溢れそうな涙を押し戻す。
それから、エアメールを丁寧にたたむと、封筒に入れて、
兄専用のレターボックスにしまった。