休日は、あっという間に過ぎてしまう。
いつもなら、明日の学校のことを考えて少し憂鬱になるのだけど、
今日はそうじゃなかった。
むしろ、早く明日に……できれば一週間とかささっと過ぎてしまわないかなと、かな子はそう思っていた。
兄の帰国は決まったけれど、具体的な日取りまではまだ聞かされていない。
それがいつになるにせよ、兄に会えることには変わらない。
一方で、その日が早くこないかなと、焦れた気持ちもあった。
「欲張りだな、私……」
待つことには慣れていたはずなのに、ゴールが見えたせいで、
そこまでが長く思えてしまう。
湯気でけぶる天井を見つめながら、ぼんやりとそんなことを考える。
どれだけ考えたところで、時間の流れは変わらないのだけど。
ひとつため息をついて、そろそろあがろうかと立ち上がったそのとき、
ふと鏡が目に入った。
そこに映るのは、あの頃よりも成長した自分の姿。
幼くて、小さかった体も、兄と会わないうちに随分と成長した。
変わった自分に、兄は気づいてくれるだろうか。
背も高くなったし、胸も困ってしまうくらいのボリュームを持ってしまった。
あの頃の面影を、自分の中に見いだしてくれるのかな。
あの頃のように、かな子と呼んでくれるのかな。
そう思うと、なんだか急に不安になってきた。
離れていた時間は、成長という形で、確実にお互いの体に刻み込まれているのだ。
兄にとって、自分はたくさんいる妹たちの中の一人にすぎない。
だから、もし一目で気づいてもらえなかったとしても、それは仕方のないことなんだ。
だけど……。
胸の中のモヤモヤ。
不安と期待と、少しの怖さ。
「兄さんに会えるまで、ずっとこんな感じなのかなぁ……」
つぶやいた言葉は、驚くほど風呂場に響いた。